今後予定される比国からの看護師等の受け入れ環境の整備等につき、関係諸団体の担当者にインタビューし、その考え方と具体策を調査し、専門職種における外国人労働者の就業実態と効果を検討した。その結果、以下の知見を得た。(1)給与水準の設定には困難を伴う可能性がある。日本と同じ水準に設定した場合、比国からの希望者が殺到する可能性があり、低目に設定した場合、給与の安い比国人ばかりになる可能性がある。この点に関し、日本看護協会は日本と同じ給与水準にすることを前提に受け入れを容認しているが、介護福祉協会は態度を明確にしていない。(2)年齢の若い比国人が流入した場合、人件費を抑制するため、病気等で退職する高齢の職員の代わりに、比国人の職員に置き換わる事態が想定される。年齢の高い職員の失職、および、転職が困難になる可能性がある。(3)生活習慣が異なるので、高齢患者や同僚の職員と摩擦が生じやすくなる可能性がある。特に、看護師以上に介護士で問題が生じやすくなると思われる。(4)わが国における看護や介護の今後のあり方として、日本人の介護士、看護師不足を理由に外国人を受け入れた場合、介護・看護業界の労働条件が向上せず、ますます若い日本人の労働力が集まらなくなる可能性がある。従って、受け入れる場合には、受け入後の検証が不可欠と思われる。 2006年9月、わが国は比国との自由貿易協定に署名し、比国からの受け入れが決った。第1回受入れは、介護士600人、看護師400人の計1000人で、日本で継続的に働くには介護福祉士資格の取得が条件となっている。規定の年数で資格取得出来なかった場合は帰国することになる。しかし、試験の内容や今後の受入れ人数などプログラムの詳細は決まっておらず、看護・介護やわが国医療に及ぼす影響も不明である。従って、今後、更なる継続的な検討が必要であると思われる。
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