研究概要 |
【目的】Markovian Textures(MT)は核クロマチン分布を画像解析処理により分類数値化した21種類のパラメーターの総称であり、核異型度を客観的に評価できる。我々はMTによる癌細胞核核異型度評価が乳癌の乳管内進展(lntraductal spreading of carcinoma: ISC)と密接に関係していることを報告してきた。本研究では、浸潤癌主病巣のMTによる癌細胞核異型度評価から、ISCの拡がりを予測することができるかどうか検討した。【材料】Bq+Axを施行した浸潤性乳癌104例を材料とした。【方法】切除標本の5mm厚全割切片から乳管内進展距離を計測し、乳管内進展距離が10mm以下をLow ISC群(64例)、11mm以上をHigh ISC群(40例)とした。画像解析装置CAS200(Cell Analysis System Inc.,USA)を用いて、主病巣のFeulgen染色切片から浸潤癌部、浸潤癌巣内乳管内成分、乳管内進展部(進展距離10mm以内)の測定部位別に、癌細胞約100個の核画像を入力した。入力した画像ファイルをもとに画像解析プログラムCellSheetTM Ver.2.0(Bacus Laboratories Inc.,USA)によりMT値を自動計測した。主病巣の各測定部位別に算出したMT値について、両群間で比較検討した。相関関係の検討にはPearsonの確率相関係数を求め有意差検定の結果p<0.05を有意差ありとした。【結果】(1)浸潤癌部、浸潤癌巣内乳管内成分、乳管内進展部のすべての測定部位で、MT値はHigh ISC群で有意に高値であった。(2)乳管内進展による断端陽性群(11例)の浸潤癌巣内乳管内成分のMT値は、断端陰性群(93例)に比して有意に高値であった。(3)HighIsc群とLow ISC群の間で有意差を認めたMTはContrast、Diffrence Moment、Inverse Difference Moment、Diagonal Momentの4種類であった。【結語】画像解析装置を用いたMTの計測による主病巣の乳癌細胞核異型度評価は、乳管内進展の拡がりを予測する良好な指標となることが示された。また、乳癌細胞核異型度による乳管内進展の予測は、乳房温存手術における切除範囲の設定に有用な情報となりうることが示唆された。
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