研究概要 |
[実験経過] 本研究の最終目標は、H.pylori感染ヒト胃粘膜におけるカプサイシン感受性知覚神経(CGRP陽性神経)の分布様式であるが、本年度は基礎データを得るため、次の2点について検討した。 1)H.pylori感染胃粘膜におけるCGRP陽性神経の分布様式の変化を考察するために必要な基礎データを得るため、正常ラット胃粘膜におけるCGRP陽性神経の分布様式を検討した。 2)H.pylori感染胃粘膜におけるその分布様式を胃粘膜の細胞増殖能と合わせて考察する必要から、H.pylori感染ヒト胃粘膜における粘膜上皮細胞の変化とH.pyloriの相互関係を検討した。 [結果] 1)については、CGRP陽性神経の分布様式の特徴は、体部粘膜では粘膜全層に均一に分布し、その表層へ向かって伸びる先端は表層粘液細胞直下まで到達していた。幽門粘膜では腺底部側に集中して分布しており、表層まで達する神経線維は少ないことが分かった。また、分布密度は幽門粘膜の腺底部側で最も高かった。以上の所見からカプサイシン感受性知覚神経の分布様式は、体部では表層粘液細胞ムチンの合成促進(Ichikawa, et al.)を、幽門部ではソマトスタチン分泌の促進(Kawashima, et al.)を支持するものであった。 2)については、H.pylori感染胃粘膜ではH.pyloriは増殖過程にある粘膜上皮細胞表面には接着して存在していないことは分かった(論文発表)。 [進行中の検討] H.pylori感染胃粘膜についての分布様式の検討は、現在H.pylori感染モデルを作成中である。ヒト胃粘膜に対する検討は材料の選択を進めている。更に分布様式の3次元的解析については、より高精度な結果を得るための方法論(標本作製法)の改良を検討している。
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