研究概要 |
環境に応答して形態変化を引き起こす血小板シグナル分子の同定のために質量分析を多用して血小板の活性化に関与するアダプター蛋白CrkLの新規結合蛋白としてDOCK180ファミリーに属する新規タンパクの5.6kbからなる全長cDNAをクローニングし詳細な解析を進めている。ノーザンブロティングでは広い組織分布を示していて,本分子が血小板にとどまらず単球系などでも動脈硬化に関連性の深い細胞移動や細胞接着に関与する可能性についても検討を加えた. また、血栓止血の最初期にみられる血小板の粘着後の伸展などにアクチン重合は決定的に重要である.血小板のアクチン重合に低分子量Gタンパク質rac活性化が関与することが示唆されてきたが,そのrac活性化の下流の位置するシグナル分子は全く不明であった.我々はrac制御下にアクチン重合を制御するWAVEの3アイソフォームとも血小板に存在し,中でもWAVE1と2が共に豊富であるが,3者とも伸展血小板の葉状突起先端部に位置すること(Blood,105:3141-8,2005),やはり質量分析も駆使しWAVE制御タンパク質Abi-1,Sra-1やNap-1などが血小板に存在すること,これらがカルパインに基質であることなど血小板のアクチン重合に関する多くの新知見を得た. これら造血系細胞を用いた研究の他、神経系PC12細胞の環境応答に関与する因子の同定にも成果を上げている。例えばノニルフェノールがカスパーゼの活性化を介して細胞のアポトーシスを亢進すること、ニューロメラニンがSOD様の細胞保護作用を持つこと、神経伸長因子の作用機序にはフォスフォリパーゼA2が関与していること等について明らかにしている。
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