研究概要 |
近年、中国、台湾、フィリピン、韓国で発生している重症型皮膚・肝障害には、トリクロロエチレンによるヒトヘルペルウイルス6型(HHV6)の再活性化が何等かの形で関与していることが判明した(論文投稿中)。ウイルスのようにゲノム内に組みこまれた外来遺伝子は次第に活性化しなくなっていくことが知られており、これは細胞における外来遺伝子からの防御と考えられている。この外来遺伝子の不活性化はウイルス遺伝子発現の調節を行っているLong Terminal Repeat (LTR)のメチル化またはメチル化と同調するヒストンの脱アセチル化がメカニズムであると考えられている。そこで本研究においては、17年度は、「トリクロロエチレン曝露によりHHV6遺伝子が脱メチル化され、HHV6の再活性化が起り、皮膚・肝障害が進展する」との仮説をたて、入院後経時的に採血した患者のHHV6量およびサイトカイン量を測定し、疾患の進展との関連性を検討した。 2005年1月から12月までに約35名の入院患者から1週間毎に採血をし、血漿とバフィーコートを採取した。その血漿を用いてサイトカイン(IFNγ、TNF-α、IL-1β、IL-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-10)を測定した。一方、バフィーコートからQIAamp DNA Blood Mini Kit (QIAGEN)を用いEHV6,genomic DNAを抽出した。内部標準としてAlbumin (Alb)を用い、HHV6及びAlbの定量はGautheret-Dejean et al.(J Virol Methods. 2002 Feb;100(1-2):27-35.)の方法で行った。また、抽出したDNAを用いて、Lyall and Cubie (J Med Virol. 1995 Dec;47(4):317-22.)の方法でHHV6の遺伝子型を判定した。 8種類のサイトカインのうち、最も顕著に上昇していたのはTNF-αとIL-10であり、ほぼ同様のパターンで増減していた。IFNγは一般に入院初期に高く、その後速やかに減少していた。HHV6は入院直後が高い者、入院後1〜2週間後にピークを迎える者等様々なパターンを示したが、概してTNF-αやIL-10と同様のパターンで増減していた。HHV6の遺伝子型はAB混合型が29名、B型が6名であった。
|