本研究の目的は、RNAiジーン・サイレンシング法を用いてヒト正常組織由来株化細胞中のDNA修復系関連遺伝子を個別にノックダウンしてDNA修復異常細胞シリーズを樹立し、樹立した細胞シリーズを用いて食品由来物質のDNA修復系に与える影響を調べ、発がん抑制メカニズムを解明し、発がん予防薬の開発の応用に役立てることである。 平成18年度の計画は、 1.平成17年度にデザインしたDNA修復関連遺伝子をターゲットとした各遺伝子に最適なsiRNAをヒト由来正常細胞にトランスフェクトする 2.得られた細胞のジーン・サイレンシング効果を、リアルタイムPCR法を用いて各DNA修復関連遺伝子の発現定量、およびタンパク定量を行なうことで確認し、細胞シリーズを樹立する 3.樹立された細胞について、自然発生突然変異やDNAダメージ、アポトーシス、マイクロサテライト増幅等発がんの各過程の指標について解析を行ない、発がん関連指標のデータを蓄積する。 ことであった。 計画1において、永久的なジーン・サイレンシング効果を得るために、ベクター(レトロウィルス)およびトランスフェクトする正常細胞(大腸、あるいは皮膚由来)の選考・検討を行った。現在多用されている方法は、最高でも72時間と短いジーン・サイレンシング効果しか得られないものが多く、レトロウィルス・ベクターを用いた方法では長い効果を得られるものの、毒性の増加が懸念された。したがって、本研究の目的である細胞株シリーズの樹立への応用には、より詳細な検討が必要であることがわかった。計画2については、リアルタイムPCRシステムを用いた各DNA修復関連遺伝子の発現定量法およびタンパク定量の方法の確立を終えた。さらに、計画3についても各指標の測定方法の条件設定および確立を終え、がん細胞由来DNA修復異常細胞を用いて確立した方法の妥当性の確認を終えた。
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