研究課題
胎児期の環境要因は、児の出生時のみならず、小児期さらには成人期の健康度にも大きな影響を及ぼす。妊娠期の母親の生活習慣、栄養状態、化学物質の曝露と児の出生後の体重、身長などの小児の成長の指標との関連を検討し、生後の健康度を予測し、疾病予防・健康増進に役立てることを目的として、本研究を実施した。妊婦・小児を対象とした既存コホートを研究対象とし、妊娠12週前後に、質問紙調査を実施し、居住地や職業による化学物質の曝露、喫煙・飲酒などの生活習慣、カフェイン・イソフラボン・魚介難の摂取などを調べた。児の成長の指標として、出生時の体格(体重、身長、胸囲、頭囲)を測定した。個体要因は、母親側の異物、葉酸、ステロイドの代謝能と関連のある酵素、炎症性サイトカインの遺伝子多型を調べた。母親の環境化学物質の曝露の指標として、血中PCB・ダイオキシン類、有機フッ素系化合物の測定を行った。COMT遺伝子V158M多型のM/M型を持つ母親から生まれた児の低出生体重、子宮内発育遅延のリスクはいずれも有意に上昇し、CYP17A1遺伝子-34T>C多型のT/T型では同様の傾向が認められ、M/M型とT/T型を併せて持つ場合は、さらに低出生体重、子宮内発育遅延のリスクが上昇した。妊娠初期の母親の血清葉酸値、妊娠時喫煙・飲酒状況と新生児の出産時体重、身長、頭囲、胸囲との関連を調べたところ、血清葉酸値5.7ng/ml以下の群、喫煙群、飲酒群で、いずれも減少または減少する傾向が認められた。母親の遺伝子型を考慮すると、喫煙群のCYP2E1遺伝子CYP2E1^*5多型C1/C1型の母親から生まれた児の出生時体重及び身長と、NQO1遺伝子P187S多型のP/P型の母親から生まれた児の出生時体重、身長及び頭囲は、いずれも非喫煙群に比べて有意に減少した。今後、さらに解析を継続し、遺伝・環境交互作用を検討する予定である。
すべて 2006
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