研究概要 |
本研究は、約2,000人のトラック運転手を対象として睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing;SDB)のスクリーニングと交通事故に関連する質問紙調査、さらに重症SDB患者の治療前後の眠気および運転状況に関する調査を実施することにより、居眠り運転による交通事故のリスクを低減させる実効性の高い社会システム構築のための実証データを得ることを目的とする。 上記の対象者の中から本研究の目的・内容に賛同し、インフォームドコンセントがとれた者に、SDB検出の問診、交通事故および交通事故に関連するヒヤリハット事例の質問紙自記式調査を行うとともに、パルスオキシメトリ検査またはフローセンサ検査を実施する。SDBの重症度の判定には、パルスオキシメトリ検査の場合は、記録時間中に動脈血酸素飽和度曲線の基線が3%以上低下した後、120秒以内に回復した1時間あたりの回数(3% oxygen desaturation index,3%ODI)を指標とした。フローセンサ検査の場合は、直前の気流量が2分間平均で半分以下になった場合を低呼吸、気流が10秒以上途絶した場合を無呼吸とした。これらの基準に基づいてSDBの性別年齢別有病率を算出した。 男性トラック運転手20〜69歳約1,426人のSDBの重症度別有病率は、軽度SDB(15>3%ODI≧5)は31%、中等度SDB(30>3%ODI≧15)は8%、重症SDB(3%ODI≧30)は3%であった。女性トラック運転手20〜69歳約70人のSDBの重症度別有病率は、それぞれ23%、3%、0%であった。 次年度は、上記と同じ職業運転手に対するSDBと血圧との関連を調査する。また、全国で100万人以上と推定されている運転業務従事者のSDBスクリーニングを実施する方策として質問紙法、パルスオキシメトリ法を組み合わせた2段階スクリーニング法の精度を分析する。
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