研究概要 |
1991年、1992年の初回調査を受けた65歳以上の高齢者1,083人を6.1年間(中央値)追跡し、189人の死亡を確認した。追跡初年度の死亡例を除きその後の生死を目的変数に、初回調査時の血清β_2-M濃度および既知の総死亡危険因子(年齢、性、BMI、既往歴、血圧、血清脂質、Alb、尿タンパク、喫煙歴、飲酒歴)を説明変数に投入したCox比例ハザード分析を行った。総死亡の独立した予知因子は、年齢、地域、心疾患の既往、糖尿病の既往、喫煙歴および血清β_2-M濃度であった。ベースライン時の血清β_2-M濃度が<1.6mg/L群(lowest tertile)を基準とすると、1.6-1.8mg/L群(middle tertile)および>1.8mg/L群(highest tertile)の調整後死亡ハザード比は、それぞれ1.85(95%CI:1.17-2.91)、2.42(95%CI:1.56-3.77)であった。β_2-M濃度が1SD(0.55mg/L)上昇すると死亡率は39%(95%CI:24-56%)上昇した。 次に、1996年〜1998年の初回調査を受けた40歳〜79歳の地域住民4,465人のうち循環器疾患の既往のない4,340人を2001年まで追跡し、脳梗塞の新規発症71例を同定した。これに性、年齢をマッチさせた非発症例142人を対照とするコホート内症例対照研究を行った。ロジスティックモデル分析により既知の循環器疾患の危険因子(年齢、性、BMI、血圧、降圧剤の有無、血清脂質、血糖、尿酸、クレアチニン、尿タンパクの有無)およびIL-6、高感度CRP値を調整してもβ_2-Mと脳梗塞発症との関連は有意であり、β_2-Mが1mg/L上昇するごとのオッズ比は4.12(1.39-12.2)であった。 以上から血清β_2-Mは総死亡および循環器疾患の新たなリスクマーカーであることがほぼ確定した。
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