研究概要 |
【目的】慢性的な内臓の痛み刺激および消化管炎症が内臓痛覚や情動に及ぼす影響を検討し、IBSモデル動物を開発する。また、それぞれの実験前にcorticotropin-releasing hormone receptor 1(CRHR1)拮抗薬を投与しCRHR1の役割を検討する。 【方法】Wistar rat ♂、6週齢、各群6匹を用いた。大腸の炎症にはtrinitrobenzamine sulfonic acid(TNBS)を用いた。TNBSまたはvehicleを腸内に投与し、6週間のリカバリー期間を置いた。その後、80mmHg、20min/dayの大腸の伸展刺激を6日間連続して行い、伸展刺激中の内臓痛覚(筋電)の測定を行った。CRHR1拮抗薬として、CP-154,526を用い、大腸の伸展刺激前に投与した。6日目は、大腸伸展刺激の30分後に、不安行動(高架式十字迷路)測定を行った。その直後に断頭し、脳・大腸を摘出した。脳は-80℃で冷凍保存し、大腸はホルマリン液にて保存した。 【結果】1日目から3日目では、慢性内臓刺激群に比し炎症+慢性内臓刺激群で有意な内臓痛覚の亢進が認められた。しかしながら、5日目と6日目では、炎症+慢性内臓刺激群に比し慢性内臓刺激群で有意な内臓痛覚の亢進が認められた。また、CRHR1拮抗薬投与は、炎症+慢性内臓刺激による内臓痛覚の亢進を有意に抑制.した。一方、各群の不安行動の有意な差は認められなかった。 【結論】慢性的な内臓痛み刺激による内臓痛覚過敏の誘発が明らかになった。また、炎症による感作は、慢性内臓刺激による内臓痛覚過敏をさらに亢進させ、CRHR1拮抗薬は、この反応を抑制することが示された。来年度は、本実験で採取した脳及び腸の検討によって感作現象におけるCRHR1の役割をさらに詳しく検討し、IBS発症のメカニズムを明らかにする。
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