本研究はプロテインチップシステムを用いた疼痛性疾患の鍼灸治療評価システムの構築を目的としており、本年度はまず、本研究を遂行する上で用いるプロトコールを作成した。疼痛改善度の評価として、自覚的疼痛評価にはVisual Analog Scale (VAS)を用い、他覚的疼痛評価にはFace scale (FS)を用いることとした。また、東洋医学的病態評価として、自覚的問診項目と他覚的評価項目を策定した。鍼灸治療については、個々の対象者により鍼灸治療の適応となる東洋医学的病態が異なっていることから、固定した経穴を使用せずに、鍼灸治療の特徴である個々の対象者に適した経穴の選択(随証治療)を施すこととした。プロテオミクス解析は、ヘパリン加採血として5ml採取した血液を試料とし、銅イオン固定化チップを用いたプロテインチップシステム、Biomek2000ワークステーションによる自動化システム、飛行時間型質量分析計(TOF/MAS)を用いて測定することとした。本研究における対象者については、少なくとも3ヶ月以内に治療内容が変更されていない疼痛性疾患(肩関節痛・腰痛・膝関節痛)を有する患者の中で、ヘルシンキ宣言の倫理規定に基づいた対象者募集要項による説明に同意を得られた患者を対象とした。VAS、FS、問診項目、他覚的評価項目の記入、採血が終了した後に疼痛に対して随証治療による鍼灸治療を施し、鍼灸治療終了後にその効果を再度VAS、FS、問診項目、他覚的評価項目によって判定することとした。このプロトコールに従い、対象者を募集して鍼灸治療を行い、鍼灸治療前後得られた血液のプロテオミクス解析を行っている。
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