研究課題
本研究に先立ち、正常胃粘膜培養細胞系RGM-1に発がん物質MNNGを曝露することによって、がん様変異株RGK-1の樹立に成功した(特願2005-22954)。同株はRGM-1に備えられない腫瘍形成能、非足場依存性、移動能を有する株である。本年度はこのがん・正常間の比較検討が可能なRGM-1/RGK-1を用いて、細胞内の鉄の動態とNOとの関係を検討した。ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリンに^<59>Fe(II)をキレートし、放射性ヘマトヘミンならびにヘミンを作製した。これらの放射性其質を上述の細胞培養系に投与したところ、1)ヘミン、ヘマトヘミン双方でがん優位な取り込みを認め、2)さらに双方でがん細胞有意な排出の低下を認めた。排出に関して、ヘマトヘミンのほうが正常/がん比の乖離が大きかった。これらの細胞を低張液に曝露して破砕し、膜、細胞質、ミトコンドリア、核分画に単離し、液体シンチレーターで放射線量を測定したところ、がんでは核への取り込みが有意に高かった。また、正常で膜分画に放射性が見られ、脂溶性であるヘミンの非特異的付着を示唆すると考えられた。これらの結果は、がんの特異的鉄代謝=核に鉄を能動的に輸送することを示唆していた。細胞内NOおよび活性酸素を蛍光指示薬DAF2DAを用いて測定したところがんで双方が高値を示した。さらにNO供与体SNAPの投与はがんにおける細胞内の核特異的鉄取り込みを促進したが、正常では認められなかった。以上のことからがんでは特異的にNOによって鉄の細胞内分布が制御されている可能性が示唆された。
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