本研究の目的は消化管ホルモン及び自律神経系からの指令が取りまとめられ膵外分泌が制御されるしくみ(ペースメーカー機構)を明らかにし、消化管ペースメーカー障害の膵外分泌能に対する影響について検討することである。現在の研究の進行状況を示す。 (1)膵外分泌のペースメーカー担当細胞、及びペースメーカーのクロック機構担当遺伝子の同定 消化管のペースメーカー担当細胞であるカハールの介在細胞(interstitial cells of Cajal)はc-kitレセプターを発現しているため、消化管運動ペースメーカー障害ラット(WsRC-Ws/Wsラット;以下W変異ラット)と対照であるWistarラットの膵臓にc-kitの免疫染色を施行し、膵外分泌のペースメーカー担当細胞の同定を試みている。しかし、免疫染色が困難であり現時点では有意な結果は得られていない。ペースメーカーのクロック機構担当遺伝子の同定のため、Wistarラット及びW変異ラットの膵臓にdifferential gene display法及びRT-PCR法を行っているが、現在はまだ実験を継続している状態であり明らかな結果は得られていない。 (2)ペースメーカー障害の膵外分泌能に及ぼす影響の検討 W変異ラットとWistarラットを用いGreen等の手法(Green et a1.Am J physiol 1983)より覚醒下膵外分泌実験モデルを作成し、CCKおよびセクレチンの経静脈投与を行って膵外分泌反応を検討している。現在までの結果ではW変異ラットとWistarラットでは膵液分泌及び膵液蛋白分泌に有意な差は認められていない。今後はストレス負荷による膵外分泌能をW変異ラットとWistarラットで比較検討する予定である。
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