研究概要 |
本研究の目的は消化管ホルモン及び自律神経系からの指令が取りまとめられ膵外分泌が制御されるしくみ(ペースメーカー機構)を明らかにし,また消化管運動ペースメーカー障害が原因と考えられるnon-ulcer dyspepsia,functional dyspepsia及びirritable bowel syndrome等の消化管運動失調性疾患の病態における膵外分泌ペースメーカー障害の関与,また慢性膵炎の腹部症状における消化管運動ペースメーカー障害の関与について解明し,膵臓と消化管のクロストークを明らかにすることである。本年度の研究目的は(1)ヒトにおける膵外分泌ペースーメーカー機構の解明と,(2)ヒト慢性膵炎における消化管ペースメーカー機能の検討である。 本年度に実施した研究結果は,(1)胃腸運動失調性疾患と診断した患者にBT-PABA試験を施行して膵外分泌機能を検討した結果,正常対照群と比較して有意に低値を示したことと,(2)ヒト慢性膵炎症例において消化管運動能を^<13>C呼気試験で検討した結果,正常対照群よりも消化管運動は有意に低下していたことである。以上の結果から,胃腸運動失調性疾患では膵外分泌ペースメーカー障害を認め,ヒト慢性膵炎では消化管のペースメーカー障害が認められると考えられ,膵臓と消化管のペースメーカー障害はクロストークを有していることが示唆された。本研究の結果から慢性膵炎と消化管運動失調性疾患はペースメーカー障害という点で共通しており,潜在的には合併している可能性が示唆された。尚,本年度の研究目的(1)のヒトにおける膵外分泌ペースーメーカー機構の解明についてはヒト膵臓の組織が十分量得られておらず明確な結果は得られていないため,今後も研究を続ける予定である。
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