1)心筋細胞と融合させる細胞の選択 緑色蛍光色素(GFP)または、LacZ遺伝子を発現させた新生仔ラット心筋細胞と、GFP、LacZ遺伝子または赤色蛍光色素(RFP)を発現させた非心筋細胞を共培養し、心筋収縮蛋白を発現し、かつ二種類の標識蛋白を発現している融合細胞の割合を評価した。非心筋細胞としてマウス初代骨格筋培養細胞、C2C12骨格筋細胞株、3T3細胞、マウス骨髄間葉系細胞、ヒト内皮前駆細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト冠動脈平滑筋細胞株、マウス心筋線維芽細胞を使用した。その結果、各細胞とも心筋細胞との共培養により心筋細胞の形質を獲得した融合細胞を形成したが、C2C12、3T3細胞、平滑筋細胞株では融合細胞形成は極度に少なく、HUVECが最も高頻度に融合細胞を形成した。 2)融合細胞における非心筋細胞由来のreprogramingの確認 融合細胞においてラットの心筋細胞由来の何らかの因子によって、HUVECの核がreprogramingされたかを確認するために、共培養後にヒト心筋収縮蛋白および心筋転写因子の発現についてヒト特異的primerを用いたRT-PCRまたはヒト特異的抗体を用いた免疫染色法を用いて解析した。その結果、HUVECと心筋細胞の融合細胞にヒト特異的心筋トロポニンIの発現を認め、また、PCR法によりヒト特異的GATA4、CSX/Nkx2.5遺伝子発現を認めた。したがって、心筋細胞には通常は発現が抑制されている内皮細胞のGATA4、CSX/Nkx2.5遺伝子発現を活性化させる因子が存在することが明らかになった。 3)心筋細胞抽出物質による心筋分化誘導 心筋細胞の粗抽出成分を作成し、double chamberを用いてHUVECと培養したが、心筋細胞への分化は認められなかった。また、低濃度のdetergentまたは、酵素によりHUVECの細胞膜の透過度を高めた後に心筋細胞の粗抽出成分を作用させたが、心筋細胞への分化は認められなかった。これは、抽出成分中の蛋白分解酵素阻害剤や細胞膜傷害による細胞毒性が原因と考えられた。 今後、内皮細胞と心筋細胞の融合促進によるassayの簡略化と心筋のcDNAライブラリーの導入によるスクリーニングを予定している。
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