研究概要 |
G蛋白共役型受容体(GPCR)の多くが、特異的なリガンドの結合により速やかに細胞内移行(インターナリゼーション)する。これまで、種々の培養細胞(HEK-293細胞やCHO細胞)に安定発現させたオーファン受容体(リガンドが未定の受容体の総称)の細胞内セカンドメッセンジャー(cAMPやCa^<2+>)を標的に未知の生理活性物質がいくつも同定されてきたが受容体の細胞内移行を標的にして成功した例は皆無である。 今回、循環系の臓器(ブタの左心房、左心室、肺、腎臓、副腎)の抽出液を可能な限り大量に獲得し、濃縮した。その一部を酸化に十分注意(ペプチドのCYs-Cys開裂を防止)しながら凍結乾燥して細胞培養用の培地(サンプル中のペプチドの吸着を防ぐため含有BSAの濃度を1%に増加した)に再溶解し、サンプルを調整した。一方、2種の安定発現系(class Bのヒトオーファン受容体2種)のクローンのうち、FACS解析で細胞膜発現の最も低いものを選定し直し、前述のサンプルを個別に添加したが、蛍光顕微鏡とFACS解析でリガンド依存性の細胞内移行を確認することが出来なかった。我々が樹立したアドレノメデュリン(AM)受容体サブタイプの安定発現系(Kuwasako, et. al. J. Biol. Chem. 2000)に、高濃度のAMが存在するブタ副腎の抽出液を添加したところ、いずれの受容体サブタイプも迅速に細胞内移行したことから、方法論やアッセイの手順に問題はなかったと思われる。種々の条件検討を十分に行った結果、class Bの別のオーファン受容体を用いるのが最適と考え、現在、検討し直している。
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