研究概要 |
ラットにブレオマイシンを気管内投与し,これによって誘発される肺線維症(ブレオマイシン誘発肺線維症)をモデルとして検討を行った。まずブレオマイシン投与後の肺におけるアクチビン、アクチビン受容体、アクチビンのアンタゴニストであるフォリスタチンの発現の変化を検討した。アクチビンのβAサブユニットはブレオマイシン投与後に発現が増加した。免疫組織化学法により投与後7日以内は肺胞マクロファージ、肺胞上皮細胞などに発現が増加し,それ以降ではさらに増生した線維芽細胞に発現が著明であった。アクチビン受容体の発現は肺胞上皮,マクロファージ、気管平滑筋細胞、線維芽細胞などに認めたが、ブレオマイシン投与後に変化は見られなかった。フォリスタチンはマクロファージ、肺胞上皮細胞などに発現していたが,ブレオマイシン投与後増加した。とくに7日以降には線維芽細胞に多く発現が見られた。そこでアクチビンの作用を抑制する作用を持つフォリスタチンをブレオマイシン投与後に静脈内に投与すると,ブレオマイシン投与初期(-7日後以内)の急性炎症が有為に抑制され,肺胞マクロファージ数も減り,肺胞洗浄液のタンパク量やLDH量も減少し,また細胞数も有為に減少した。それとともに投与4週後の組織における肺線維化も著明に改善していた。また肺線維症のメルクマールであるハイドロキシプロリン含量も有為にフォリスタチン投与群で低下していた。以上の結果から,ブレオマイシン誘発肺線維症にはアクチビンが関与しており、それをフォリスタチンで抑制することにより肺線維化が抑制できることが明らかになった。
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