研究概要 |
国立国際医療センター倫理委員会において、課題名「特発性間質性肺炎に関連する新しいウイルスの探索について」として本研究内容に関する審査と承認をうけた上で研究が遂行された。 国立国際医療センター受診の特発性間質性肺炎患者から、上記倫理審査の内容に基づき、文章による説明と同意取得を行った上で、血清の提供を受けた。 昨年度の検討の結果から、遺伝子増幅を行う前段階で材料中のウイルス遺伝子量を出来るだけ増やす必要があることが判明し、今年度は方法を大幅に改変した。制限酵素処理とアダプターライゲーションに伴う核酸の損失をなくすために、Allanderらの新しい方法(PNAS102:12891-6,2005)を取り入れた。また、同法の後半のサブクローニングを行わずにPCR産物のダイレクトシーケンスで遺伝子配列を得られるように独自の改変を加えた。改変した方法によるウイルス遺伝子検出力を確認するために、GBvirusCを10^5GE/ml含むことが既知の血清100μlを材料にしてみたところ、全長約9kbのウイルスゲノムのうち、複数箇所の遺伝子断片を得ることができ、再現性も良いことがわかった。このため、特発性間質性肺炎患者血清についても同様に新しい方法でウイルス遺伝子検出を試み、得られた遺伝子配列はBLASTとFASTAにて既知の遺伝子配列との比較を行った。その結果、特発性間質性肺炎患者血清のひとつから、既知の配列とは相同性の低い未知の遺伝子配列が得られた。しかし、FASTAの結果からはウイルス遺伝子よりは細菌遺伝子に近い配列であると考えられた。今年度の検討により、5例の患者血清からの新しいウイルス遺伝子クローニングには至らなかったが、ウイルス遺伝子探索方法として非常に有用な新しい方法が開発された。
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