研究概要 |
本研究では末梢血リンパ球および胸腺組織を材料として,MGの免疫機能を治療前と後で比較検討し以下の知見を得た. (1)ケモカイン受容体CXCR5シグナルがB helper T細胞(TFH)とB細胞がリンパ組織のB細胞領域に局在する際に重要な役割を果たしている.MG患者の末梢血CD4Tリンパ球のCXCR5発現頻度が有意に上昇している事を明らかにした. (2)PD-1(Programmed cell death 1)を介する抑制系について検討した.CD4T細胞におけるPD-1陽性細胞比率はMG群と対照群との間で差が無かった.CD8T細胞におけるPD-1陽性細胞比率は,MG群において有意に低下していた.過形成胸腺合併MG群と胸腺腫合併MG群との間でPD-1陽性細胞比率に差はなかった.MG過形成胸腺(N=5)においてPD-1 mRNAレベルは正常胸腺の3〜5倍に増加していた.胸腺腫でのPD-1発現は一定の傾向を示さなかった. (3)Th1型Tリンパ球の機能を制御するCXCR3の発現を検討し,未治療MGでは末梢血CD4リンパ球でのCXCR3発現率が有意に低下している事,治療後徐々に正常化することを見いだした. MGは臓器特異的自己免疫疾患の典型と考えられてきたが,関節リウマチなど他の自己免疫疾患を合併する率は高い.本研究の知見はMGが全身の免疫機能異常をバックグラウンドに持つことを示唆している.AIDSではCD8リンパ球におけるPD-1発現が著明に増加しているが,治療による免疫機能の改善とともにPD-1発現率が正常化することが報告された.MG患者末梢血CD8Tリンパ球におけるPD-1発現変化は,MGが単純な臓器特異的自己免疫疾患では無いことを示すと思われる.免疫機能を調節するシグナル分子の制御系解明が今後の課題である.
|