研究概要 |
未熟な造血幹細胞で機能している2つのホメオドメインタンパク質、HOXB4とHOXA9について、それぞれの機能を相互に制御する機構が存在するかどうかについて解析を進めている。これまでに以下のことを明らかにした。 1.HOXB4とHOXA9は異なる核移行シグナルを有する。 HOXA9のホメオドメイン内には2つの異なる核移行シグナルが存在する(Kirito K, et al. Mol Cell Biol 24:6751,2004)。この知見にもとづいて、ヒトおよびマウスのホメオドメインタンパク質内に核移行シグナルが存在するかどうかについて検索した。その結果、ホメオドメインのヘリックス3内に存在する核移行シグナルはすべてのホメオドメインタンパク質で認められたが、ヘリックス1のN末端側に存在する核移行シグナルはHOXA9を含むAbdominal Bクラスのホメオドメインタンパク質にのみ認められた。 2.ホメオドメインは核外輸送シグナルとしても機能する。 HOXA9の全長をGFPとの融合タンパク質として発現させると90%以上が核内に分布する。これに対してHOXA9のホメオドメインのみをGFPと融合させた場合には30%が細胞質にも分布することが分かった。この細胞質への移行は核外輸送に関わるタンパク質であるCRM1(exportin1)の阻害剤であるleptomycin Bによって阻害された。アミノ酸配列解析からヘリックス2とヘリックス3の境界領域のロイシンに富む領域が核輸送シグナルと予想された。実際に、この領域のロイシンをアラニンに置換することによって細胞質への局在は阻害された。このことからホメオドメインは核移行シグナルと核輸送シグナルの双方を有していることが明らかとなった。
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