研究概要 |
非HIV-1感染者由来の骨髄由来および臍帯血由来のの造血幹細胞を用いて、抗HIV薬の造血幹細胞の分化増殖へ与える影響をコロニーアッセイ法を用いて調べたところ、いくつかの症例で、逆転写酵素阻害剤で副作用として貧血を来すことが知られているAZTによるCFU-EおよびBFU-Eの増殖阻害作用が確認された。プロテアーゼ阻害剤であるAPVを加えてコロニーアッセイを行ったが、明らかな造血幹細胞に対する効果は認めなかった。また、AIDSを発症して当科に入院した3症例で骨髄穿刺を行い、造血幹細胞を分離、既存の抗HIV薬である逆転写酵素剤のAZT, d4T,3TCおよびプロテアーゼ阻害剤のNFV, LPV存在下でコロニーアッセイを行った。一症例ではAZT, d4TによるCFU-EおよびBFU-Eの増殖阻害作用が確認されたため、HAARTの開始時には参考とし、ABC/3TCとLPV/rにより治療を開始したところ現在までのところ治療効果は良好である。また、残りの2症例についてはd4TおよびAZTを使用、造血に対する副作用は出現しなかったが、1症例は高乳酸血症のため治療薬を変更した。以上からAIDSを発症した症例においては日和見感染症に対する治療が少なくとも数週間必要となるため、入院時に骨髄穿刺を行い、コロニーアッセイを行い、その結果を基に造血系への副作用を軽減したオーダーメードHAARTを考案可能でありその有用性が示唆された。また、新規のCCR5阻害剤であるAK602/ONO-4128(aplaviroc)および他のCCR5阻害剤(TAK779)の造血幹細胞への影響についてHIV-1感染者および非感染者由来の造血幹細胞を用いコロニーアッセイを行ったところ、わずかではあるがCFU-EおよびBFU-Eの分化増殖の阻害していたが確認された。HIV-1による造血環境に与える影響を調べるため、コロニーアッセイにて得られたコロニーよりDNAを抽出し、HIV-1の感染の有無を調べたところ、BFU-E, GM, GEMMともにHIV-1の感染は認められなかった。今後は症例数を増やして詳細な検討を進める予定である。
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