研究課題/領域番号 |
17659304
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
中島 利博 聖マリアンナ医科大学, 難病治療研究センター, 教授 (90260752)
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研究分担者 |
八木下 尚子 聖マリアンナ医科大学, 難病治療研究センター, 講師 (40367389)
荒谷 聡子 聖マリアンナ医科大学, 難病治療研究センター, 研究員 (40387064)
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / シノビオリン / 小胞体 / 転写制御 / 造血 / 遺伝子改変マウス / アポトーシス |
研究概要 |
関節リウマチ(RA)の最も有効な治療ターゲットのひとつは滑膜細胞である。近年我々が報告したシノビオリンは、マウスでの強発現により滑膜増殖性の関節症をおこし、反対に発現抑制では滑膜のアポトーシスによるコラーゲン誘導性関節炎への抵抗性を示したため、シノビオリンは滑膜細胞の増殖促進作用と抗アポトーシス作用を有する分子であることをin vivoで証明した(Genes Dev 2003;17:2436)。シノビオリンは小胞体に局在するE3ユビキチンリガーゼであることから、その機能は小胞体内の不良蛋白(unfolded protein)の除去、すなわちERAD(Endoplasmic Reticulum Associated Degradation)であり、この分子が高発現しているRA滑膜細胞は"Hyper-ERAD"とも呼ぶべき不良蛋白除去能の亢進状態であると想定される。本研究は、「Hyper-ERADはRA滑膜細胞の新たな細胞学的特性」であるという概念にもとづきシノビオリンの機能解析を手掛かりに、新規RAの病態論の展開を試みた。その結果、下記の成果が得られた。 (1)シノビオリン転写活性化には、プロモーター上のEBS(Ets binding site)がコアエレメントとなることを発見した。また、そのEBSデコイ核酸を用いてシノビオリンの発現を抑制することにより細胞増殖が抑制されることを証明した(Mol Cell Biol 2005;25:7344)。 (2)シノビオリン遺伝子欠損マウスが胎仔肝でのアポトーシスの亢進による二次造血の異常・貧血を引き起こし13.5日齢までに致死となることを明らかとした(J Biol Chem 2005;280:7909)。さらにこの遺伝子欠損マウス由来胎仔線維芽細胞を用いて、基質探索を試みた結果、基質候補分子の同定に成功した(論文投稿中)。 以上のように、シノビオリンはアポトーシスに広くかかわることが明らかとなり、また基質候補分子の同定により新たなRA治療の標的を見出すことに成功した。今後、これらの知見をもとに研究を進めることでRAの治療法の開発が期待できる。
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