研究概要 |
母性刷り込みを受けるX染色体上の領域を、母由来X染色体(X^m)でDNAメチル化を受け、かつ父由来X染色体(X^p)でメチル化を受けない領域とし、以下の方法により決定した。健常男性末梢血由来DNA(46,X^mY)を制限酵素Hind IIIで切断。断端にPCRリンカーを接続。さらにメチレーション感受性制限酵素Hap IIで切断。リンカーPCRをかけるとHap IIで切断されなかった(=メチル化された)DNA断片のみが増幅される[Pool A]。同一男性精子由来DNA(23,X^P+23,Y)を制限酵素Hap IIで切断。断端に別のPCRリンカーを接続し増幅するとメチル化されていないDNA断片のみが得られる[Pool B]。男性における体細胞ではX染色体は母親由来の刷り込みを受けている(X^m)のに対し、精子では新たに父性刷り込みを受ける(X^p)ことに注目。従って目的の領域はPool A、Pool Bに共通するDNA断片に含まれる。 当初の計画では、一方のPoolをビオチン化しハイブリダイゼーションする予定であったが、実験してみるとゲノム中の反復配列が邪魔をし、正確なハイブリダイゼーションPoolを得ることが出来なかった。そこでDNAマイクロアレイによる直接同定を試みた。ジーンフロンティア社(東京)にカスタムアレイの製作を依頼。プローブ長50mer,プローブ数376017本,インターバル175bpでX染色体全体をマイクロアレイ1枚に網羅した。上記で得たPool A, Bを各々Cy5、Cy3で標識後マイクロアレイに競合ハイブリダイゼーションし両者のシグナルが同時に出現した部位を目的領域とした。この結果、X染色体上の7箇所に連続した領域が同定され、その近傍より29個の候補遺伝子が挙げられた。H18年度はこれらの候補遺伝子に対し、自閉症患者との相関解析を行う予定である。
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