これまで、IL2-IL-15レセプターβ鎖(CD122)欠損マウスを用いた研究から、マウスにおいてはCD8^+ CD25^+細胞分画に制御性T細胞(Treg)が存在することが判明している。われわれは、同種骨髄移植後の患者の免疫能の再構築をモニタリングする過程で、慢性GVHDの発症とCD8^+ CD122^+細胞分画の割合とに一定の傾向があることを見い出した。本研究では、平成17年度に当科で同種骨髄移植をおこなった15例の同種骨髄移植症例について、継時的に移植後のCD8^+ CD122^+細胞とCD8^+ CD122^-細胞の比率を、FACS caliburを用いて測定した。同時にCD4^+ CD25^+細胞の動態についても解析した。健常人ではCD8^+ CD122^+細胞/CD8^+ CD122^-細胞の比率は1.0以下であり、HLA一致同胞間移植においても、移植後全期間を通じて0.1〜8.0に分布し、その中央値は1.0であった。一方、非血縁者間あるいはHLA不一致血縁者間移植症例では、慢性GVHDの発症がみられる移植後day60からday80におけるCD8^+ CD122^+細胞/CD8^+ CD122^-細胞比は0.5から100.0(中央値10.0)で、HLA一致同胞間移植症例と比較して高い傾向を示した。非血縁者間あるいはHLA不一致血縁者間移植症例で、慢性GVHDを発症した3例では、慢性GVHDを発症する直前のCD8^+ CD122^+細胞/CD8^+ CD122^-細胞比は1.0以下であった。慢性GVHDの発症がみられなかった症例では、CD8^+ CD122^+細胞/CD8^+ CD122^-細胞比はその中央値が8.0であった。一方、急性GVHDの発症とCD8^+ CD122^+細胞の動態とは一定の傾向はみられなかった。またCD4^+ CD25^+細胞についても継時的に検討したが、GVHDの発症との関連はみられなかった。以上の検討から、同種骨髄移植後のCD8^+ CD122^+細胞は、慢性GVHDの発症を制御している可能性が示された。今後単離したCD8^+ CD122^+細胞のin vitroにおけるMLRに対する制御能の検討を予定している。
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