健常成人末梢血単球をGM-CSFとIL-4の存在下で培養することにより樹状細胞を分化誘導した。この樹状細胞に麻疹ワクチン株を感染させ、紫外線照射によりウイルスを不活化した後、別に準備した自己樹状細胞に貪食させることにより、抗麻疹樹状細胞ワクチンを作成した。麻疹ウイルスは樹状細胞に感染すると、細胞内でウイルス糖蛋白であるヘマグルチニンを産生し、樹状細胞表面に表出させる。ヘマグルチンは樹状細胞がT細胞に抗原提示する際、T細胞の増殖・活性化を抑制するシグナルを伝達し免疫抑制を惹起する。我々が作成した抗麻疹樹状細胞ワクチンはこのヘマグルチン蛋白を表出していないことを確認した。すなわち、免疫抑制が惹起されないことが示唆された。抗麻疹樹状細胞ワクチンが自己T細胞によるインターフェロンガンマ(IFN-g)の産生を誘導する事をELISPOT assayで確認した。すなわち、本ワクチンが抗麻疹免疫を誘導することが示唆された。 抗麻疹樹状細胞ワクチンが、造血細胞移植後などの免疫抑制状態にある患者おいても効果的に抗麻疹免疫を誘導しうるか検討した。造血細胞移植後の患者(n=24)の末梢血から作成した抗麻疹樹状細胞ワクチンが、自己末梢血単核球によるIFN-γの産生を誘導することをELISPOT assayで確認した。特に移植後1年以内の患者や、免疫抑制剤を投与中の患者、GVHDを発症している患者、および臍帯血移植後の患者から作成したワクチンもin vitroで効果的にIFN-γ産生を誘導した。すなわち、本ワクチンは造血細胞移植後極早期の患者や、免疫抑制下にある患者、移植前にも抗麻疹免疫を獲得していなかった患者にも有効である事が示唆された。 以上の結果を平成17年12月のAnnual Meeting of American Society of Hematologyで報告した。またすでに論文を作成し、現在英文雑誌に投稿中である。
|