研究概要 |
インフルエンザ脳症における解熱剤による予後悪化のメカニズムを解明する目的で以下の検討を行った。 1.マウスはddYを用い、Dic(ジクロフェナクNa),MA(メフェナム酸)およびAce(アセトアミノフェン)を経静脈投与し各臓器の血中濃度を調べた。またSLT-IIによってBBB機能を破壊した脳症マウスを作り脳血液関門(BBB)破壊に伴う各解熱剤の臓器移行の変化を調べた。 2.Dic,MAおよびAceの脳移行性は極めて異なっており、Dic>>Ace>MAであることが明らかになった。また、SLT-IIを処置すると、DicおよびMAの脳移行性はそれぞれ約1.5倍および約2.95倍と有意に上昇するが、Aceでは有意な変化が認められないことが明らかになった。以上の結果より、インフルエンザ脳症による高サイトカイン状態では、DicおよびMAの脳移行量が増加し、脳症の増悪を引き起こしている可能性が示唆された。一方、Aceの脳移行性はSLT-IIによって変化しないことから、Aceは薬物動態学的にも脳症の増悪に関与する可能性が低いことが実証された。 3.さらに、Dic,MAおよびAceの肝組織移行性についても検討を行った。その結果、Dic、MAおよびAceの肝組織中濃度はDicで約1.2倍、MAで約1.8倍、Aceで約1.4倍であり、肝組織におけるこれらのNSAIDs濃度の測定はそれぞれの血中濃度を予測するのに有用な指標であることが明らかになった。しかしながら、血漿蛋白結合率で補正した組織移行性はDic>>MA【greater than or equal】Ace、であり、肝臓においてもDicは高い組織移行性を示すことが明らかになった。 以上の結果は、小児のインフルエンザ脳症患児における、解熱剤の影響について重要な知見と思われた。
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