母体腹壁から胎児心電図を測定する問題点に胎動による胎児の非定常性、胎児心電図成分の非線形、特定の胎齢における母体腹壁への伝導率低下があげられる。本研究ではこれらの問題を解決する為、胎動にも対応可能な非線形フィルターの開発および活動電位伝導路の解明を目的とした。 昨年度行ったウサギの実験データの解析から胎仔心電に特定の伝導経路は存在せず、測定できる電位は電極と胎仔の相対的角度におよび胎仔と母体の接触面積に依存することが判った。今年度はそれらの知見から最適な電極配置法と高効率電極の開発を行った。胎仔と母体の接触面積に依存する伝導はシュミレーションからコンデンサー効果による容量結合が起きていることが推察された。この推察に基づき高インピーダンス特性を持つ新しい電極を開発した。また、胎動により変化する電極と胎仔の相対的角度を良好に維持するため電極の形状を改良した。 これらの電極の性能を検証するためウサギよりも遙かに微少な活動電位しか生じないマウス胎仔を用いて心電図測定を試みた。母体腹壁上からでも電極を胎仔の心臓を挟むような角度で設置すれば数μVしかないマウスの胎仔心電の計測が可能となった。容量結合を応用した高インピーダンス電極および胎仔との相対的角度を考慮した電極の形状と配置は胎動による胎児の非定常性および特定の胎齢における母体腹壁への伝導率低下という胎児心電図サンプリング時の問題点を克服できる手法であることが示唆された。
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