研究方法 胎齢17日の妊娠後期マウス胎仔(C57BL/6N)を用いて実験を行った。母体麻酔下で開腹し、対象となる一仔に電極を装着した。装着する電極の種類や配置場所を変更し、ノイズの混入や有効信号の導出の有無などを精査し、有効な電極の開発及び配置法を検討した。 研究結果 マウス胎仔の心電位は数μVと極めて小さく、電源の低ノイズ化などシールドの強化を図ったが信号の抽出は困難を極めた。この様な状況ではS/N比が極端に低いために通常の電極では有効な信号が含まれているかの判断は不可能であった。そのため有効な電極配置の検討すらできない状態であった。我々は容量結合による信号導出に着目し、高インピーダンスな特性を有する針電極を開発した。この高インピーダンス電極を用いることでノイズの混入を低減することに成功した。また胎仔を傷つけることなく心電位の導出が可能な電極の配置法を発見した。今までに開発した非線形フィルターを併用し、母体心電位や筋電位を除去した結果、世界で初めてマウスの胎仔心電位の計測に成功した。記録した心電図の解析した所、マウスでは存在しないとされていたT波の存在を胎仔で確認した。 数μVと極めて小さな信号に対して、シールドルームなど特殊な設備を有していない通常の環境でも使用可能である新しい高インピーダンス電極とその配置法及び非線形フィルターの開発し、あらゆる妊娠週数での胎児心電図測定を可能とする基礎技術を得ることができた。
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