研究課題
ダウン症新生児における一過性骨髄増殖症(Transient myeloproliferative disorder ; TMD)は、胎児期の肝臓にて発症する特殊な白血病と考えられている。この疾患が生後急速に自然治癒する機序として、造血の場が生後肝臓から骨髄に移行することが関係する可能性が考えられる。TMD白血病細胞の増殖に及ぼす肝臓・骨髄の造血微小環境構成細胞の影響を両者の共培養実験にて解析した。材料と方法:TMDの白血病細胞はダウン症新生児の患者から得られた末梢血芽球分画を用いた。微小環境を構成する細胞株として、FHC-4D2(ヒト胎児由来肝細胞)、AFT024(マウス胎児肝由来線維芽細胞)、KM101(ヒト骨髄由来細網細胞)、ST2(マウス骨髄由来細網細胞)を放射線照射後に培養器底面に壁付着細胞とし、この上でTMD白血病細胞の浮遊培養を行った。微小孔膜にて白血病細胞と壁付着細胞を分離した環境下でも同様の実験を行い、対照として壁付着細胞非存在下で造血因子添加・非添加にて白血病細胞の浮遊培養を行った。結果と考察:2例のTMD白血病細胞を用い、4週間の培養を行った。液体培養後の白血病細胞数はいずれの条件下でも減少したが、1例ではKM101細胞存在下で培養が長期間維持された。コロニー培養法にて白血病前駆細胞の数を経時的に追跡した結果、壁付着細胞非存在下では4週後までに激減したが、AFT024またはKM101細胞存在下では、壁付着細胞に接着する白血病細胞分画中にコロニー形成細胞が多数残存した。ただし壁付着細胞自身もコロニー形成能を有することが判明したため、今後白血病細胞を壁付着細胞から分離回収後にコロニー培養を行い、より正確な結果を得る必要がある。肝・骨髄の造血微小環構成細胞がTMD白血病細胞の増殖に影響を与えることが示されたが、TMDの自然治癒との関係を知るにはさらに解析が必要である。
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