研究概要 |
まず、正常組織DNAおよび若干の色素細胞腫瘍のDNAを用いて、新しいゲノムプロファイリング法であるMultiplex Ligation-dependent Probe Amplification (MLPA)法の技術的問題点を検討し、これを克服した。 次いで、研究協力者の斎田により病理組織学的に診断が確認された、メラノーマ24例、色素細胞母斑18例、スピッツ母斑14例の定型例を対象として、MRC-Holland社から入手したP005,P006の2種類のMLPAプローブミックスを用いて、ほぼ全染色体に分布する合計72種類の癌関連遺伝子のコピー数の異常を解析した。その結果、メラノーマのコピー数異常は1〜32(平均12)、色素細胞母斑/スピッツ母斑のそれは0〜2(平均1)であった。ROC解析では、98%の特異度でメラノーマと診断するためのコピー数異常の閾値は2.42であり、この閾値を用いたときの診断感受性は92.5%であった。したがって、MLPA法を用いた遺伝子コピー数異常の解析は、メラノーマと母斑類の鑑別にかなり有望であると考えられた。 さらにメラノーマとSpitz母斑のより正確な鑑別を目指し、癌遺伝子BRAF,NRASの変異の検索を行った。その結果、メラノーマではBRAFまたはNRAS遺伝子の変異が高頻度に認められるが、Spitz母斑ではそれは全く認められなかった。この成績から、遺伝子コピー数異常の解析とともにこれらの癌遺伝子変異の有無が両者の鑑別に極めて有用であることが示唆された。
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