In utero遺伝子導入法と遺伝子トラップ法を組み合わせて、毛包組織の細胞分化、並びに毛周期の進行に関わる遺伝子を網羅的に同定することを試みた。まず、レトロウイルスをベースに、遺伝子トラップのためのトラップベクターを作製した。EGFP遺伝子とLacZ遺伝子をマーカー遺伝子とするトラップベクターを構築し、ウイルスベクター産生細胞を得ることができた。ウイルスベクターを培養細胞に感染させ、蛍光顕微鏡下で観察したところ、効率は良くないものの感染が確認された。しかし、感染効率が低いためか、遺伝子トラップが起こったlacZ陽性細胞を確認することはできなかった。ウイルスベクターの感染効率を上げるため、ウイルスベクターを含む培養上清を高速冷却遠心機で16時間遠心し、ウイルスベクターを濃縮してから細胞に感染させた。しかし、遺伝子トラップ細胞は見つからなかった。そこで、遺伝子トラップベクターを構築し直した結果、一部の細胞では遺伝子トラップが確認されたものの、その効率は極めて低いものであった。トラップベクターの作製と平行して、lacZレトロウイルスベクターを用いてin utero遺伝子導入のための条件検討を行い、30ug/mlのポリLリジンの添加により、最も感染効率が上がることがわかった。また、毛包組織でもレンチウイルスがうまく働くとの情報を得て、より遺伝子導入効率が高いレンチウイルスベクター法に切り替えることも考えて、トラップベクター構築プランを練り、遺伝子組換え実験の申請が通り次第、ウイルスベクターを作製できるよう準備を整えた。
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