研究概要 |
研究の目的は、皮膚の幹細胞として注目されている表皮細胞のside population細胞(SP細胞)を用いて爪を再生することである。 爪由来角化細胞の培養およびgene chipによる解析 多指症の手術時に得られた余剰指からnail matrixを分離し、ディスパーゼ溶液中に浸し、4℃で24時間静置した。翌日ピンセットにて上皮成分と真皮成分を分離し、上皮成分をトリプシン溶液で10分間反応させ細胞を回収した。無血清培養液を用いて培養を開始したが、回収された細胞数が極端に少なく、培養は困難であった。3回試みるもすべて培養はできなかった。 線維芽細胞の培養およびgene chipによる解析 手掌の線維芽細胞が手掌の角化細胞のケラチン発現に重要であるとの報告から、爪上皮の形成にもnail matrix由来線維芽細胞が重要な役割をはたしていると考え、nail matrixと皮膚の真皮から線維芽細胞をout growth法にて培養した。nail matrixに特異的に発現しているサイトカイン、細胞成長因子の検索のために、それぞれの細胞からRNAを抽出し、保存した。 SP細胞を利用した表皮幹細胞の分離 多指症の手術時に得られた余剰指から皮膚を剥離し、トリプシン処理にて細胞を分離・分散し、セルソーターにてSP細胞とmain細胞を分離回収した。それぞれの分画の細胞を培養し、増殖能力について検討したところ、SP細胞の方が増殖能力が高かった。 爪幹細胞マーカーの検索 爪上皮幹細胞に強発現しているサイトカイン受容体、細胞成長因子受容体等の幹細胞マーカーについて免疫組織学的に検討したところ、爪幹細胞が存在しているとされる部位ではNGFR, p63, b1 integrin等が比較的強発現していることが明らかとなった。 本年度の研究成果を基に、次年度は表皮角化細胞から爪細胞を誘導する系について検討を加える。
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