研究概要 |
ヒト脳には、聴覚環境の変化を自動的に検出するメカニズムが備わっている。その基盤にある感覚記憶(sensory memory)は一次聴覚野近傍に発生源を持っミスマッチ陰性電位(mismatch negativity、以下MMN)反応に反映される。研究代表者らの研究から、背景音を構成する種々の要素の膨大な情報が、時間統合(temporal integration)機構によって約160-170msの時間方向の神経表現として、感覚記憶に詳細に符号化されている事がわかってきた。ところで、感覚記憶に符号化された(神経的に表現された)聴覚情景(auditory scene)の中に流れる時間は、現実世界の時間の流れとは違っていると思われる。符号化された情報としての時間は現実世界の時間の規則に従う必要性が無いためである。これまでの研究では、複雑音で得られた磁気MMNの潜時に反映されるような前部と後部の欠落セグメント間の符号化された音情報の時間の長さは実時間に較べて短かく、時間が脳皮質に神経的に表現された聴覚情景の中で圧縮されている可能性が示唆されている。本研究では、時間分解能の良い全頭型脳磁図(MEG)を使用して、神経的に表現された時間の様態が、周波数を系統的に変えた場合、大脳皮質上にどのように展開するかを詳細に捉えて時間方向の聴覚情景地図を作成する。 本年度は研究2年目に当たるが、感覚記憶における聴覚情景の中の時間現象の一部の結果について学会報告を行ってきた(2nd SICPB2006(Shanghai),14thIPEG2006(Awaji)2006,第36回日本臨床神経生理学会学術大会シンポジウム(横浜,2006)。論文による成果の公表は最終年度以降に行う。
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