研究概要 |
本研究の目的は、長期反復的なトラウマ体験により生じる複雑性PTSDの診断および治療過程を評価するツールを開発することである。複雑性PTSDは,van der KolKらによりDESNOS(Disorders of Extreme Stress, Not Otherwise Specified)という診断概念に洗練され,その半構造化面接SIDES(Strutured Interview for DESNOS, SIDES)と自記式質問票(SIDES-SR)が作成されている。本年度は,このSIDESとSIDES-SRの日本語版の作成と標準化を行った。まず,van der Kolkに日本語版開発の許可を得て、日本語に訳した。その日本語訳のバックトランスレーションを原本とつき合わせて改変し,最終的な日本語版を作成した。この日本語版を、臨床群36名(男性2名、女性34名、平均年齢35.9歳)および一般群59名(男性19名、女性40名、平均年齢35.7歳)に調査を施行した。SIDES自記式、面接とも生涯診断ではすべての下位項目でCronbachのα係数が0.7以上と十分な信頼性が確認されたが、現在診断ではα係数が0.7を下回る項目もあった。トラウマあり群(臨床群のうち、トラウマがあることが確認された者)とトラウマなし群(一般群のうち、トラウマなしと回答した者)を比較したところ,トラウマあり群(33人)ではSIDES自記式、面接ともほぼ100%がDESNOSの生涯診断を満たしたのに対し、トラウマなし群(49人)ではDESNOS診断を満たすのは0%で有意差が認められ、十分な妥当性が確認された。しかし、DESNOS現在診断を満たすのは両群とも0%であり、有意差は認められなかった。これまでの調査により、SIDES日本語版の生涯診断については十分な信頼性と妥当性が確認されたといえる。
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