本研究課題については、すでに新潟大学の遺伝子倫理委員会による承認を得た。現在は、対照群となる健常者の末梢血収集をすすめている。末梢血リンパ球からの単核球(PBMC)の単離も順調に進行している。従来の研究では、PBMCにおけるドーパミン関連分子の測定に、免疫細胞化学的手法や、ラジオアイソトープを用いた実験が行われる。しかし、これらの手法では一検体の測定に長い時間をようするため、多検体の処理には適していない。そこで本研究では、より簡便な方法で、PBMCにおける遺伝子発現量の測定が可能かどうか検討した。PBMCからmRNAを生成し、cDNAの合成後にリアルタイムPCR法を行った。リアルタイムPCRは、アプライドバイオシステムズ社の、Assay on Demand遺伝子発現キットを用いた、TaqMan PCR法により行った。ドーパミン関連分子の発現量測定を行ったところ、ドーパミントランスポーターと小胞モノアミントランスポーター2については、この方法でも測定可能であることが分かった。しかし、チロシン水酸化酵素は測定感度以下であった。TaqMan PCR法を用いた測定はきわめて簡便であるため、このような遺伝子発現量の少ない分子についても、測定条件の工夫により定量化が可能ではないかと考えている。一方、本研究の目的であるPBMCの培養については、既にその実験環境が整っている。今後は、臨床サンプルの収集を急ぐとともに、培養条件下での、薬剤や生理活性物質による遺伝子発現量の変化を検討していく予定である。
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