研究概要 |
出生時のhypoxic brain damageは統合失調症の危険因子である。そこで子宮内低酸素状態を実験的に経験させたラットを用いて統合失調症の動物モデルとしての有用性を検討した。Sprague-Dawley系雌性ラット妊娠満期最終日に開腹して子宮を取り出す。その双角子宮の一側を、胎仔を含んだまま37℃の生理食塩水に15分間浸すことで低酸素状態を経験させる。これを仮死モデル群とする。もう一側の子宮から得られた仔を帝切群とし,同日に別の母から生まれた仔を自然分娩群とする。これら3群をそれぞれ代理母ラットに保育させて以下の実験を施行した。 1.メタンフェタミン2.0mg/kg腹腔内投与時の移所行動量は生後6週,12週および24週において仮死群で有意に増加していた。NMDA受容体遮断薬MK-801(0.3mg/kg腹腔内投与)では6週,12週および24週で3群間に移所行動量の増加量に差は認められなかった。 2.社会的行動では6週,12週および24週で3群間に有意な差は認められなかった。 3.統合失調症の生物学的なマーカー(中間表現型)として着目されている感覚運動系の障害を表す聴性刺激驚愕反応の先行刺激による抑制(Prepulse inhibition : PPI)は6週,12週および24週ともに3群間に有意の差は認められなかった。 4.放射状8方向迷路による空間学習能力の検討では,6週では空間学習記憶に有意な差は認めなかった。12週は現在評価中である。24週では、作業記憶および参照記憶ともに仮死群において有意に障害されていた。 5.脳病理組織学的変化は現在評価中である。
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