研究課題
システム生物学の導入により放射線治療の体積効果を解明するためには、正常組織と癌組織の相互作用に関する研究を進める必要があり、その相互作用のひとつとして癌免疫がヒントになり得る。我々は、本研究では局所放射線治療に全身性抗腫瘍効果を誘導出来る免疫治療を併用し、その腫瘍に対する腫瘍体積抑制効果を検討した。(方法と結果)腫瘍は放射線、免疫治療それぞれに耐性を示す上皮性腫瘍Lewislungcarcinoma(LLC-OVA)を用いた。免疫治療はType1型免疫を強力に惹起するCpG癌ワクチン治療をもちいた。LLC-OVAをC57BL/6に2x10^6個皮内接種し、腫瘍の大きさが6mm〜8mmになったところで治療を開始した。放射線(X線)を照射する際、腫瘍部以外は厚さ4mm鉛板で遮蔽し、腫瘍局所に1回14Gy(10G/min)で2日続けて2回照射した。2回目の照射が終わった直後にCpG(50mg/head)とOVAタンパク(200ug/head)をリボソーム(230ug/head)に封入し所属リンパ節近傍に皮内接種した。その結果、放射線治療単独群、CpGワクチン治療単独群では若干抗腫瘍効果が見られたが、顕著な延命効果は見られなかった。それに対し放射線治療とCpG癌ワクチン治療の併用群では顕著な抗腫瘍効果と延命効果が見られ、完全治癒するマウスも観察できた。また併用群では所属リンパ節、腫瘍内において腫瘍特異的CTLが相乗的に誘導されていることも確認された。これらのことは放射線治療とCpG癌ワクチン治療との併用が上皮性癌の治療においても非常に有用であることを証明している。これらの実験成果は、放射線治療の将来によって、腫瘍の体積縮小効果にも"免疫"として捉えられた生物システムが大きく関与していることを示しており、さらに"システム"としての生物を放射線治療の分野でも研究を進めることの重要性を示唆した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 64(5)
ページ: 1581-1588
J Neurooncol. 78(1)
ページ: 63-69
Int J Radiat Oncol Biol Phys 64(4)
ページ: 1229-1236