研究概要 |
本研究では、生体が本来備えている免疫寛容性抗原提示細胞を再生し応用することで、正常な生体防御能を保ちつつ移植抗原に対する免疫応答のみを抑制しうる特異的免疫寛容誘導プロトコールの確立を目指した。マウス骨髄間葉系から再生した内皮様細胞をINF-γで刺激すると主要組織適合性抗原class II及びCD80を高発現したが、CD40の発現を欠いた。INF-γ刺激間葉系細胞と同種異系T細胞を混合培養すると、CD4^+T細胞の増殖は誘導されずCD8^+T細胞には増殖初期にアポトーシスが誘導された。INF-γ刺激間葉系細胞のT細胞増殖抑制遺伝子の発現プロファイルを解析したところ、トリプトファンの分解によるT細胞増殖を抑制するindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO) mRNAの高発現が確認された。以上の結果は、臓器移植における免疫制御において、ドナー由来INF-γ刺激間葉系細胞の投与によって拒絶反応を抑制しうる可能性を示唆する。 そこで、INF-γ刺激骨髄間葉系内皮様細胞を同種異系マウスに静脈内あるいは門脈内経路で移入したマウスの脾臓を採取し、骨髄間葉系内皮様細胞と同系由来のT細胞と混合培養したところ、特異的低反応性を示した。そこで、INF-γ刺激骨髄間葉系内皮様細胞を同種異系マウスに静脈内あるいは門脈内経路で移入した後に骨髄間葉系内皮様細胞と同系マウスからの心臓を移植したが、生着延長は認められなかった。そこで、ドナー由来INF-γ刺激骨髄間葉系内皮様細胞のIDO産生を促進して移入すれば、T細胞のドナー抗原特異的低反応性が増強され、間葉系内皮様細胞と同系マウスの心臓の生着延長があられるのではないかと考えた。アデノウイルスベクターを用いIDO cDNAを導入した産生C3Hマウス由来間葉系内皮様細胞をB6マウスに門脈内投与し、C3Hマウスの心臓を移植したところ、著明な生着延長効果が得られた。
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