拒絶予防・治療を目的とした免疫抑制剤の使用が、移植を必要とした患者にとって感染や臓器障害あるいは原疾患の再発の原因となることは少なくない。従って、正常な生体防御能を保ちつつ移植抗原に対する免疫応答のみを抑制することが理想的な免疫制御療法といえる。我々は、骨髄間葉細胞から再生した内皮様細胞の移入により移植抗原応答性T細胞を寛容化する可能性について検討してきた。 本年度は、ドナー抗原を貪食した宿主由来の再生内皮様細胞の移入により、ドナー抗原に間接認識経路で応答するT細胞を制御し得るか否かを解析した。B6マウス由来の細胞膜を貪食したBalb/cマウス間葉由来の内皮様細胞は、Balb/c由来のMHC class II分子を発現し、かつ抑制性の共刺激分子の発現様式を示した。この内皮様細胞を刺激細胞としてCarboxyfluorescein diacetate succinimidyl esterで細胞質染色したBalb/c由来のT細胞と共培養すると、B6抗原特異的にT細胞の分裂・増殖が抑制された。さらに組織適合性抗原(MHC)-class II-deficient B6マウスの細胞膜を貪食したBalb/cマウスの内皮様細胞をBalb/cに門脈内投与し、その1週間後にMHC-classII-deficient B6マウスの心臓を異所性に移植した結果、この異系移植心の生着期間は有意に延長された。本研究結果より、ドナー由来のペプチド抗原を表出した宿主由来の内皮様細胞を門脈内移入することで、ドナー抗原に間接認識経路で応答するT細胞を低反応化あるいは寛容化できる可能性が確認された。
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