研究概要 |
本年度の研究目標は爆発的な増殖力、長期生存能、可塑性を有する齧歯類由来の肝上皮性幹様細胞を大量に培養してその動態を観察すること、この細胞が生体内でどのような細胞に変化するかをみること、そしてこの細胞に増殖因子を投与してどのような変異をするかを観察することにあった。 本細胞は単離された内皮細胞のほぼ、2万個に1個の割合で存在した。本細胞は単離後、葉状仮足を出し盛んに運動し別の細胞と対をなすように集合し、増殖した。その際、お互いに融合した後は爆発的に分裂し増殖した。この遊走過程ではアクチンが強力に発現し、また、マクロファージのマーカーであるED2も強発現したが、細胞がconfluentになるとこれらの発現は消失した。また、下記因子の染色ではAFP, Albumin, PASは陽性、Flk-1,PECOM-1は強陽性、CD34,F-VIII因子は一部陽性、CK7/17はごく一部陽性という結果であった。更に、増殖因子に対してはVEGFにより細い糸状の構造が形成されそれが網状構造を呈した。また、HGFにより細胞の糸状突起が伸張して大きな網状構造が形成された。EGFやFGFの添加では著しい形態の変化は認められなかったが増殖能、生存能が増強された。本細胞と内皮細胞の混在した細胞液を70%肝切除ラットの腹壁皮下に注入するとこの細胞は皮下脂肪細胞内に浸潤し定着して細胞塊を形成した。この細胞塊はPAS弱陽性、一部AFP陽性を示した。非肝切除ラットでは定着が認められなかった。 以上から本細胞は胆管系細胞よりも血管内皮系細胞に類似した表面蛋白を発現し、白血球や周皮細胞のように遊走し、組織に定着すると共に増殖因子に対し可塑性を示す細胞で、肝が損傷を受けた際などには局所に遊走し、そこで分裂増殖を行いながら微小環境の要求する肝構成組織に変化する幹細胞様の性格をもっていることが裏付けられた。
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