RIN1遺伝子は染色体11q13.2に位置し、coding region 2352bpから構成される分子であり、SH2、SH3ドメインならびにH-Ras、14-3-3蛋白質と結合するドメインを有することが知られ、細胞内シグナル伝達経路の重要な1分子であることが考えられている。私どもはこのRIN1遺伝子にSplicing patternの異なる新しい分子が消化器癌に存在することを確認した。 方法:(1)消化器癌細胞株を対象として、RNAを抽出後、RIN1 Specific probeを用いたRT-PCR法をおこない、RIN1遺伝子発現についてsequenceをおこない、そのnucleotideの配列について検討した。(2)他の胃癌、大腸癌細胞株におけるRIN1 variant mRNAの発現を検討した。 結果:(1)大腸癌細胞株において既知のRIN1遺伝子以外に異なるbandが確認された。新しいbandについてsequenceをおこない、既知のRIN1遺伝子と比較すると、N末端寄りのチロシンをリン酸化する部位は保たれていたが、SH2、SH3ドメインは欠落する形であった。またC末端のH-Rasおよび14-3-3 proteinと結合するドメインは保存されており、既存のRIN1遺伝子とは異なるSplicing patternを示すRIN1分子であった。(2)胃癌細胞株では6例中4例、大腸癌細胞株では6例中3例において発現が認められた。なお胃、大腸正常粘膜各10症例について検討したところ、その発現は認められなかった。 胃癌、大腸癌の細胞株において既知のRIN1遺伝子とはSplicing patternの異なる分子が存在することを確認した。この分子の構造は既存のRIN1遺伝子とは異なり、癌細胞において特異な働きを担う分子である可能性が考えられた。
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