2系統のRbトランスジェニックマウスを得た。A系統のマウスはトランスジーンを1倍体当たり11コピーもち、B系統のマウスは1倍体当たりトランスジーンを4コピーもっている。 今年度は、このトランスジェニックマウスが化学発癌抵抗性を示すかどうかを検討した。化学発癌にはRbトランスジェニックマウス雌とC3H雄のF1(遺伝的背景:B6C3F1)を用いた。生後6週齢のマウスにジエチルニトロソアミンを腹腔内投与し、1週後からフェノバルビタール含有水を35週継続飲水させる。コントロールマウス、Rbトランスジェニックマウス肝臓の病理標本を作製し、腫瘍性病変の性質、悪性度、頻度を検討した。まず、コントロールマウスでは雄、雌とも肝細胞癌が誘導された。雄の発癌性は雌の2-3倍であった。Rbトランスジェニックマウスでは雄雌とも肝細胞癌はまったく認められなかった。次に、結節病変について検討した。コントロールマウスでは雄は平均3.85個の結節を生じるに対し、雌は平均1.70個の結節を生じた。RbトランスジェニックマウスA系統では、雄は平均0.82個の結節を生じ、雌は平均0.33個の結節を生じた。A系統のマウスでは雄雌とも、トランスジェニックマウスは癌抑制性に働いていた。一方、B系統のマウスの雄では、平均0.60個の結節を生じ、雌では平均1.20個の結節を生じた。有意検定をしたところ、B系統では雄のみに有意に結節の頻度が減少していることが明らかになった。以上の全結果をまとめると、Rb遺伝子は肝臓化学発癌に対して抑制的に働いていることを意味していることが明らかになった。 今後の計画としては、Rb遺伝子が癌抑制的に働く分子カスケードを明らかにしたいと思っている。
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