昨年度までにThy1(+)細胞の中に存在するGP(+)細胞は胆管細胞特異的なマーカーCFTRを発現し、胆管前駆細胞である可能性が示唆されたことから、マウス胎仔肝より蛍光励起セルソーターを用いてThy1(+)GP(+)およびThy1(+)GP(-)細胞を分離し、RT-PCRおよび免疫染色にて遺伝子および蛋白発現を検討した。その結果、両細胞共にαSMA、desmin、vimentinの発現を認めたが、CFTR以外の胆管細胞特異的マーカーの明らかな発現を認めなかった。従って、Thy1(+)GP(+)細胞は胆管前駆細胞の可能性よりも、幼若な間葉系細胞と考えられた。一方、Thy1(+)GP(+)細胞を用いたin vitroにおける肝組織構築の検討を行う過程で行った共培養実験の結果、Thy1(+)GP(+)細胞はCD49f(+)肝前駆細胞のin vitroにおける成熟化を促進させる効果がある一方で、Thy1(+)GP(-)細胞は成熟化を抑制することが確認された。本年度は両細胞のさらに詳細な特性解析をマイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析により検討したが、幼若な間葉系細胞であるということ以上に細胞種を同定するには至らなかった。一方、CD49f(+)肝前駆細胞にもGP(+)細胞とGP(-)細胞が存在することが明らかとなった。これまでの先行研究から胆管細胞と肝細胞は共通の幹・前駆細胞から発生すると考えられていることから、胆管前駆細胞の分離および肝細胞および胆管細胞を含む高次肝組織再構築を目指して、CD49f(+)肝前駆細胞分画中のGP(+)およびGP(-)細胞に着目し蛍光励起セルソーターを用いてそれぞれの細胞を分離採取し、現在その特性解析を進めている。
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