研究概要 |
セプチンは重合性を持つGTP結合蛋白質で、多様な蛋白質や複合体を局在化ないしは安定化すると考えられる(Curr Opin Cell Biol 2006)。セプチン系の破綻によって細胞分裂に必須なチューブリンを主体とする染色体分配機構(紡錘体)とアクチンを主体とする細胞質分裂機構(収縮輪)が損なわれ、染色体不安定化や多核化をもたらすと考えられる(Genes Dev1997,Science 2005)。一方、「Sept4遺伝子に由来するアポトーシス誘導蛋白質ARTSはTGF-β依存的にミトコンドリアから核内に移行し、caspase-3を活性化しアポトーシスを誘導する」という、上記事実とは一見矛盾する仮説が提唱された(Larisch ら Nat Cell Biol 2001,EMBO J 2004)。我々は、「Sept4=アポトーシス誘導因子」仮説の検証を試みた。しかし、Fas抗体を用いた劇症肝炎モデルで、Sept4欠損マウスはヘテロタイプ、野生型と比較して、血清transaminaseの上昇およびHE染色における肝組織アポトーシス像に有意差を認めなかった。これらの結果から「Sept4=アポトーシス誘導因子」は否定的と考えられた。 一方、マウス肝臓の免疫組織染色にてSept4は肝非実質細胞に発現を認めた。発現細胞を明らかにするためにマウス肝より密度勾配遠心法を用いて肝細胞、星細胞以外の間葉系細胞、肝星細胞を分離培養しそれぞれSept4の発現をWestern blottingにて検討した。その結果、Sept4は肝星細胞に特異的に発現していることが示唆された。星細胞の活性化は肝線維化をもたらすことより、肝線維化におけるSept4の役割を明らかにするために肝星細胞初代培養系およびマウス総胆管結紮による肝線維化モデルにて検討を進めている。
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