研究概要 |
膵島移植は国内では心停止ドナーの膵臓(温阻血障害膵)から行うことになっている。しかし分離された膵島のviabilityを正確に評価する方法がなく、viabilityが低い膵島の無駄な移植を回避するためにはその開発が急務である。温阻血障害の程度をラット膵臓に与えた温阻血時間で1群:0分、2群15分、3群30分に分けた。その後、コラゲナーゼで消化した膵組織に二層法保存を用いて酸素を供給し、その燐酸代謝産物を^<31>P-Nuclear Magnetic Resonance(NMR) spectroscopyで測定した。β-adenosine triphosphateとphosphate monoesterの比(βATP/PME)を指標とすると、温阻血障害30分でその値は有意に低下した(1群:0.11+/-0.04、2群:0.12+/-0.04、3群:0.03+/-0.01)。また膵島収量は各々1798±203、1186±216、689±271であった。さらに、糖尿病ヌードマウスに200個の膵島移植を行った後の糖尿病治癒率は各々100%(8/8)、75%(6/8)、0%(0/8)であった。この結果から、上記の手法で膵島移植後の生着・非生着を移植前にある程度正確に分別できる可能性が示唆された。現在英文雑誌(Pancreas)に投稿中である。 上記の研究に平行して行った類似の研究では、温阻血障害膵を二層法で3時間保存すると、保存しなかった場合と比較して有意に膵島収量・機能の改善が認められた。この結果はTransplantation 80(6),738-742,2005に掲載し報告した。
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