ヒト膵癌細胞株COLO357FGとその肝高転移性バリアント細胞株COLO357L3.6plにおいて、Neurotrophic receptorであるP75NGFRはcDNAマイクロアレイと半定量RT-PCRの結果、COLO357L3.6pl細胞で約53倍高発現していた。そこで、この遺伝子が膵癌の肝転移性に関与しているかどうかを確認した。 この両細胞は、in vitro では、細胞の増殖能はCOLO357FG細胞の方が増殖能が高く、逆にC0L0357L3.6pl細胞では培養48hr後で細胞死する傾向がみられた。また、神経栄養因子であるBDNFを添加し培養しても、この結果に変化はみられなかった。 浸潤性膵管癌の切除標本45例でのP75NGFRの発現を免疫染色(LSAB法)で確認した。P75NGFRの発現性と術後の成績との関係をみると、術後の累積3生存率はP75NGFRの発現が50%以下の群(32例)と50%以上の群(13例)では、50%以下の群6.9%であるのに対し、50%以上の群では69%と50%以上の群が有意に良好であった。また、再発率も50%以下の群は100%であった。また、リンパ節転移陽性率についても、P75NGFRの発現性50%以下の群では融%と転移が高率であるのに対し、50%以下の群では38%と有意に低率であった。 以上のことから、Neurotrophic receptorであるP75NGFRは肝転移性に関与しているのではなく、細胞の増殖能に関与している可能性が示唆され、その結果、臨床データーにおいても、P75NGFRを発現している症例で術後成績が良好であったと推測される。
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