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2006 年度 実績報告書

薬剤耐性遺伝子MRP4を標的とした新しい癌分子標的治療薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17659429
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

田中 文啓  兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (10283673)

キーワードMPR4 / 薬剤耐性 / 抗癌剤 / 肺癌 / 分子標的
研究概要

本研究は新規薬剤耐性遺伝子MRP4の非小細胞肺癌における意義を検討し、これを標的とした新しい肺癌の分子標的治療を開発することにある。これまでの検討で、MRP4は抗癌剤をはじめとする各種薬剤の薬剤耐性遺伝子として機能する一方で、癌化とともにその発現が低下するために腫瘍抑制遺伝子としても機能することが示唆されてきた。そこで平成18年度には非小細胞肺癌におけるMRP4の発現の意義を明らかにするために以下の基礎的・臨床的検討を行なった。
1 平成17年度に行なった野生型マウスでの各種臓器でのMPR4遺伝子発現を定量的検討により、脾臓・精巣と並んで肺におけるMPR4の発現が非常に高く、これら臓器での細胞内抗癌剤(CPT-11など)濃度は有意に低値であることが判明した。またMPR4ノックアウトマウスでは肺を含む各種臓器でのMPR4発現消失とともに抗癌剤の細胞内濃度が著明に上昇したこと、in vitro実験でMPR4がCPT-11を細胞外に排出することにより肺癌の薬剤耐性に関与していることも確認した。このことから肺癌切除標本におけるMRP4発現の検討を行なったが、有意な知見は得られなかった。このことは肺癌の生物学的多様性を反映しているものと考えられ、肺癌の薬剤耐性の機序はMPR4にのみ起因するものではないことが示唆された。
2 非小細胞肺癌組織でのMRP4発現を定量的に検討すると、プレリミナリーな検討では正常肺部分と比べて癌部では有意に低下し、また癌の進行とともにその発現低下が見られた。これらの結果はMPR4が肺癌においても癌抑制遺伝子として作用している可能性を示唆しており、非小細胞肺癌株を用いてin vitroでの浸潤能やin vivoでの腫瘍増殖や転移能と、これら細胞株でのMPR4発現の相関を現在検討を行なったが、MPR4発現と癌の悪性度の間には明らかな相関を認めなかった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2007 2006

すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Maspin gene expression is a significant prognostic factor in resected non-small cell lung cancer (NSCLC).2006

    • 著者名/発表者名
      Katakura H
    • 雑誌名

      Lung Cancer 51・3

      ページ: 323-328

  • [雑誌論文] Lung adenocarcinoma harboring mutations in the ERBB2 kinase domain2006

    • 著者名/発表者名
      Sonobe M
    • 雑誌名

      J Mol Diag 8・3

      ページ: 351-356

  • [雑誌論文] MDA-7/IL-24-based cancer gene therapy : translation from the laboratory to the clinic.2006

    • 著者名/発表者名
      Inoue S
    • 雑誌名

      Curr Gene Ther 6・1

      ページ: 73-95

  • [雑誌論文] 非小細胞肺がんの術後補助化学療法2006

    • 著者名/発表者名
      田中 文啓
    • 雑誌名

      呼吸器科 9・2

      ページ: 117-123

  • [雑誌論文] A novel classification of MUCI expression is correlated with tumor differentiation and postoperative prognosis in non-small cell lung cancer2006

    • 著者名/発表者名
      Nagai S
    • 雑誌名

      J Thorac Oncol 1・1

      ページ: 46-51

  • [雑誌論文] Maspin expression and its clinical significance in non-small cell lung cancer2006

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa M
    • 雑誌名

      Ann Surg Oncol 13・11

      ページ: 1517-1523

  • [図書] Annual Review 呼吸器20072007

    • 著者名/発表者名
      田中 文啓
    • 総ページ数
      246
    • 出版者
      中外医学社

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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