肺胞マクロファージの経気道的移植法を確立することを目的として、以下の研究を行った。 ドナーマウスから回収した肺胞マクロファージを経気道的にレシピエントマウスの肺内に投与した。移植前処置として、放射線照射により骨髄機能を一時的に低下させた群(照射群)と対照群を設定した。移植後、1週および9週の時点で、レシピエントマウスを犠牲死させ、末梢血および肺胞洗浄液中の細胞数、細胞分画、ドナー由来細胞比についてフローサイトメトリーにて検討した。その結果、対照群においては、経気道的に移植された肺胞マクロファージは、移植後1週および9週の時点でレシピエントの肺胞洗浄液中に認められた。しかしその実数およびドナー/レシピエント比は時間経過とともに減少し、9週では1%未満であった。照射群では、移植後1週で肺胞洗浄液中の細胞数は、対照群の約半分に減少していた。一方、ドナー由来の細胞数は移植した細胞数よりも増加しており、これは対照群の2倍以上を示した。移植後9週では肺胞洗浄液中の細胞数は対照群と同等に回復しており、ドナー/レシピエント比およびドナー由来の肺胞マクロファージ実数ともに対照群を大きく上回った。同時に検討した末梢血中には対照群、照射群いずれの時点においてもドナー由来細胞は検出されなかった。 以上から、肺胞洗浄により回収した肺胞マクロファージ懸濁液を経気道的に投与することにより、肺胞マクロファージの移植が可能であった。移植前に放射線照射を行うことにより、生着率が向上する可能性が示唆された。
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