ES細胞からドーパミン産生神経を誘導する方法として、SDIA(Stromal cell-Derived Inducing Activity)法および5step法が知られている。前者は後者に比べ手順が簡便でより多くのドーパミン産生神経を得られる点で優れているが、マウス由来フィーダー細胞を使うのでマウスの病原体や遺伝子が移植の際に混入する可能性があり、このままでは臨床応用はできない。そこで我々は、SDIA法における重要な要素を抽出及び同定し、マウス細胞を使用しない新しい方法を開発した。 SDIA法は新生マウス頭蓋骨由来のPA6細胞をフィーダーとしてES細胞を播種し、コロニーを形成させることでドーパミン産生神経を誘導させる方法である。我々は、マウス胎児由来髄膜細胞との共培養によっても、ドーパミン産生神経誘導が可能なことを明らかにした。神経誘導活性の主な要素として、細胞外基質及び分泌因子の2つが考えられる。まず、Matrigelを基質としてマウスES細胞を培養することで、中脳の神経を誘導できることを発見した。さらに、PA6のConditioned medium(CM)を添加することにより、ドーパミン産生神経誘導能を回復できることが分かった。髄膜細胞とPA6細胞が共通して発現するWntシグナルに関わる因子をスクリーニングすることによって、ドーパミン産生神経誘導に関わる因子を同定することに成功した。それらの因子をMatrigel上で培養したES細胞に添加することにより効率良くドーパミン産生神経を誘導することが分かった。
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