本年度は、機能的プロテオミクスを中心にして、血管攣縮を誘発すると考えられているSPC刺激によって活性化・不活性化されるシグナル分子の抽出を目指して、以下の結果を得た。 1.SPCによって異常収縮を引き起こしている血管において、Srcファミリーチロシンキナーゼの活性に依存して、また、収縮の時間経過と類似して、チロシンリン酸化が増加あるいは低下するシグナル分子を、初年度に、数個抽出する事ができたが、本年度は、その中で同定できた分子の中で、シグナル伝達に関連すると考えられるチロシンリン酸化部位をした。 2.Srcファミリーチロシンキナーゼの中で、血管異常収縮に関与している分子として、Fynに焦点をあてて、初年度より解析を進めてきた。本年度は、さらに確証となり得る以下の所見を得た。 1)Fynの活惟型と不活性型のコンストラクトを得て、ヒト冠状動脈血管平滑筋細胞において、過剰発現実験を行った。不活性型Fynの過剰発現では、血管平滑筋細胞は弛緩を認め、活性型Fynの過剰発現では、著明な収縮を認めた。 2)ベータ・エスシンで細胞膜に小孔を開けて、上記の活性型・不活性型Fynを、血管平滑筋の細胞質へ急速投与する実験を行った。初年度は活性型FynがCa非依存性収縮を引き起こす事を観察したが、本年度は、その手法を用いて、不滑性型Fynが、SPC、GPCRアゴニスト、G蛋白活性化薬などによる、全てのCa非依存性収縮を抑制する事を発見した。 3)RNA干渉を用いて、候補となるシグナル分子の関与を検討した。RNA干渉によって、MAPキナーゼをノックダウンしても収縮状態には影響がなかったが、Fynをノックダウンさせると、SPCによる収縮が抑制された。
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